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小学校の授業科目を1つ増やすなら『プレゼン』をイチオシの理由

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苦手意識の払拭から広がる可能性

私は時折プレゼン技術に関するセミナーを開催しているのですが、そこには人前で話すのが苦手、という方が数多く参加されます。プレゼン技術を学ぶのに「遅すぎる」ということはありませんので、大学生や社会人からシルバー世代まで、どんなご年齢であっても一定の効果を実感いただいています。しかしながら皆さんがセミナーを受講し共通に言うのは「もっと早い時期に学びたかった」ということです。プレゼン技術を学ぶのに「早すぎる」ということも同様に無いもの考えていますので、幼少期にプレゼンテーションの正しいやり方を体系的に学ぶことで効果的な表現スキルを習得し「授業での発表が苦手だったなぁ」というあの漠然とした意識を払拭することは十分に可能です。

では学ぶ時期はいつ頃が良いかというと、小学校の低学年(1~2年生)くらいが望ましいと考えています。その頃の子供たちは、学校という空間を通じ「社会(科目ではなくsocialという意)」の存在を知り、そこで一個人として情報を受発信することを、様々な授業や行事を通じて学んでいきます。国語や算数、生活といった科目では知識の習得を深めるために手を上げて発表したり、先生からの質問に皆の前で答えたりします。学芸会や音楽会では文化・芸術の魅力に接しながら、多くの人前で表現することの経験を得ていきます。これらの活動を通じて、そもそも「コミュニケーションの大切さを学ぶ」という教育目的もあるものと思われます。

プレゼン指導は具体的な内容で

しかしながら子供たちが具体的な「自己紹介のやり方」や「伝わりやすい説明の仕方」「効果的な身振り手振りの使い方」といった、人前での表現をどのようにやるのが良いかというプレゼン技術のHowを学ぶ機会は現在の授業体系にはありません。度胸と経験が成長につながるのだとばかり、多くの観衆の前に押し出されて、恥ずかしそうに発言・発表をする。その様子が可愛らしくも見えるので、事後には「頑張ったね〜」と暖かい言葉で褒めてあげる。私も同じ親としてその気持ちはよくわかるのですが、しかしこの機会をより有効な時間とする工夫があったならば、その経験は将来にわたるより明確な財産として子供たちの内面に残るのではないでしょうか。

そこで、私の考える新設科目『プレゼン』ではこんなことをやってみたいと考えています。

・遊びながら人前に立つことで多くの目線に慣れる、体感ゲーム

・誰かに伝えたい、という大好きなものや出来事を自由に話すトーク。

・どこを見て、だいたい何秒で次の人に移って、というアイコンタクトのコツ。

・何から話して、何で終わると聴きやすい?聴き手の立場で文章を構成するレッスン。

・今の気持ちを14文字で伝えてみよう、「短く」まとめる練習。

・「ドキドキ」にはこんな風に付き合うといいよ、という心構えのヒント探し。

・テレビの人になったつもりで、話す姿を録画して自分でチェック。自分の声や姿勢への気づき。

これらが実現できたらきっと「人前での発表が嫌だなあ」というモヤモヤが少し晴れてくるでしょう。そして自由に表現することを通じ、その先にある何かを開花させることが出来る子供たちも数多く現れてくるように思います。もちろん、全員が何でもできることだけが良い事ではありませんが、取り除くことのできる障壁に早めに対処することで、子供たちの無限の可能性を更に広げることができます。

実現に向けて、プロボノの力を

欧米文化においては"Show&Tell"といった、自分の好きなものを人前で見せてトークするという練習を幼稚園頃から行うと聞きます。また日本国内の英会話学校でも、語学力と共にアイコンタクトやジェスチャーを使うようプレゼン技術を指導されます。欧米の会話スタイルには元々プレゼンの概念が練り込まれていて、それらが組み合わさりコミュニケーションを形成しているものと考えます。英語が上手な人はプレゼンも上手いなあ、という印象があるのはそのためです。

日本で公教育に『プレゼン』科目を加えるにはまず、教える側のスキルを確保することが大きな課題になります。その際は何でも先生がやるというのではなく、ビジネスシーンで多くのプレゼン経験を積みスキルを持っている社会人が多くいらっしゃいますので、一定の指導者向けトレーニングを受けた上でその力を地域の小学校に還元することが望ましいと考えています。これは「プロボノ」と呼ばれている、本業での経験やスキルを社会課題の解決に役立てる仕組みで、普段学校と関わることの少ない父親層と地域をつなげるきっかけにもなります。また前回の記事でもご紹介した、世の中で増えつつある「ファシリテーター」の力を自分のビジネスのためだけでなく子供たちを相手に発揮してみることは、教える側の貴重なスキルアップの機会にもなると思います。

一方、最近は少子化の進展に伴い、様々な習い事と託児を組み合わせた手厚い教育サービスを持つ民間幼稚園や民間学童クラブの開設ブームになっています。英語や体操・楽器など学校教育を補完するプログラムが用意されていますが、上記のような子供向けプレゼン教室の隠れたニーズは存在するように思いますので、時間軸としては公教育よりも先にこちらから実現して行く可能性も多いにあります。

web・クラウド社会が進展すると知識差は限りなく小さくなり、反面コミュニケーションなどの人的な要素が残された比較軸となるとも言われています。体系的なプレゼン技術を幼少期に学ぶことの価値・重要性に社会全体が気付くのも、それほど遠い将来ではないのかもしれません。



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