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優れたファシリテーターを目指すなら守りたい4つの約束

ファシリテーションの概念が日本に導入されて10年程が経過したでしょうか。ようやく最近ファシリテーションとは何か、またその効果についても同様に世の中で認知されつつあることを感じています。旧来型の会議による一方的な指示や伝達だけでなく、参加者が相互に情報を受発信し議論を深めるというカルチャーは大切に育てていきたいですね。

さてファシリテーションが普及すると同時にその進行役であるファシリテーターの存在も必要になり、その役割を担う人が増えてきました。場作りの案内役は重要で、その采配次第でミーティングやワークショップの出来が決まります。多くの人を動かすダイナミズムに惹かれてその役割をやってみたいと目指すことはとても素晴らしいと思います。

しかしながら昨今増えてきたファシリテーターの皆さんが実際に発揮しているスキルには、まだまだ多くの課題があると感じています。今後の発展のために、気がついた点をいくつか紹介します。決して上から目線の批判ということではなく、私自身も講師・ファシリテーターの一員として重ねてきた経験・反省からの率直な提言です。

1.まずは基礎的なプレゼン技術の習得を

ファシリテーションに限らず人前で話す際に最も大切なことは「意図が相手に伝わる」ということです。そのためには声が小さい、聞き取り辛い等はもちろん避けたいですし、正しい姿勢、効果的な立ち位置、表情、アイコンタクト、ジェスチャー、話のテンポと間、等々の基礎的な「プレゼン技術」が大切です。まずはファシリテーションを始めるにあたり、きちんと体系化されたプレゼン講習を受けるなどして自分自身のプレゼン技術を一定以上に高めてから次のステップに進むことで、ファシリテーションのより高い効果を発揮することができると考えています。ファシリテーションは観衆参加型だからプレゼン技術は不要、というわけでは決してありません。人を動かすには、まずはファシリテーターのプレゼン技術が土台にあると考えています。(この点が抜け落ちて先へ先へと進んでしまい、完成度の低いファシリテーションを行っている事例が残念ながら散見されます)

2.満足すべきは自分ではなく参加者

ファシリテーターという役割は、場作りが上手くいくと大変気持ちの良いものです。参加者から「今日のワークショップ、良かったよ」と言われれば嬉しいですし、自分が思い描いたプラン通りに皆が動き一定のアウトプットにつながればなおさらです。しかしそれが本当に相手の本質的な満足度のあらわれかどうか注視することが大切です。普段の一方的な会議と違って発言ができたから満足度が高いだけではないか、満足している参加者の陰で不満足な参加者がいたのではないか、この場は盛り上がったが具体的な次のステップに繋がらないのではないか、期待されていたレベルまでの問題点の掘り下げがなされたかどうか、等々の課題は常に存在しています。表面上の達成感に惑わされず、参加者が本質的に納得し全体としての目標に達したかどうか、次への課題意識を持って確認する目線が必要です。

3.進行シナリオにとらわれない

会議やワークショップではある程度の進行シナリオを設定することになりますが、時として予定外の出来事が発生します。質問に思ったほど反応が無いとか、設定に異議を唱える方が出てくるとか、話がなかなか終わらない参加者がいるとか、準備していたはずの備品が無いなど様々です。大切なのはそのような際に、起きた事実と真摯に向き合うことです。表面を取り繕って無かったこととして進めたり、少数意見として無視したり、スムーズな進行を優先することを理由に却下したり、他人の過失を責めたりしてはいけません。参加者全員はファシリテーターがその突発的な出来事にどのように対処するかをよく見ていて、その対処の内容により厚い信頼を得ることも、失うこともあります。予定はあくまで予定であって、その全てを漏れなく進行することが必ずしも最良のアウトプットに繋がるわけではありません。例えば場を和ませるために「アイスブレーク」という簡単なゲームを冒頭に行うことがありますが、それ自体もやることが本当に効果的なのか、長さやテイストをどうするか、その場の参加者の反応を見て即座に判断することが適切です。常に柔軟に対応しふわふわと回り道もしながら、予定時刻を迎える頃にはいつのまにか着地点にいた、そんな自然体のファシリテーションが参加者のストレスを取り除き、実りを伴った時間につながります。

4.目指す姿・理想の姿を持つ

普及してきたと言ってもまだまだファシリテーターの数は少なく、自分自身がどのようなファシリテーターを目指すのか、目標を具体的に定めることは容易ではないと思います。そのためにまずは自分自身が受講者として数多くのファシリテーションの場面を経験し、様々なタイプの講師を知ることがとても勉強になります。例えば議論の活性化などで用いられるワールドカフェという手法がありますが、それは決して手順による効果だけではありません。「真理に関わる問い」を「絶妙なタイミング」で、「シンプルな言葉で」参加者の心の動きに合わせて投げかける、ファシリテーターからの言葉のプレゼントにより本来の魅力を発揮します。そのゴールをイメージできるかどうかは我流で偏った手法では困難で、優れたファシリテーションの実例をどれだけ知っているかによります。目指す姿・理想の姿を求める学びの姿勢を、誰よりも強く持って実行していくことが、ファシリテーターとしてのクオリティを高めると考えます。



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