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経営改善のために今すべきは合理的な賃下げや兼業促進など逆張り人事施策

IBM「社員大量クビ切り」の内幕(「選択」)http://www.sentaku.co.jp/category/economies/post-1935.php

 

「オレンジのソーシャルな会社」の怪文書投稿-ミクシィは250名を超える組織改編へ(CNET Japan)

http://m.japan.cnet.com/#story,35038888


いずれも最近webニュースを賑わせていますが、決して特殊な事例ではなく多くの大企業で似たような人事施策が展開されています。私が問題だと思うのは、こうしたリストラが真に経営再建のためではなく、既存の人事権を握っているごく一部の役職員の保身のために行われているという側面が否定できず、また経営改善への効果という点で必ずしも合理的でないことにあります。

mixiはともかくIBMのような大企業においては、勤続数年の中堅社員を10人解雇するよりも、50代の部長級1〜2名を解雇する方が、働きと報酬のバランスから経営改善への効果はより合理的なはずです。2番目の記事の本文中で指摘のように退職勧告となる「下位15%の社員」の評価は必ずしも公平性の元にあるものに限らず、多いに恣意的にコントロールされています。

他の企業での事例においても、たとえばリストラの一環で実施される希望退職制度に応募するのはえてして、将来有望な「シゴトのできる」中堅社員であって、本来人件費比率が高く実質的な働きに見合っていないであろう高年次の管理職の退職者はごく限られる傾向です。結果的には大きく戦力ダウンしながら人件費総額が圧縮できないという、本来の経営再建の目的には程遠い結末となります。バブル景気を謳歌した1987年からの約5年間に入社した大量採用世代が既存の人事権を持つ管理職の立場にある現在、本質的な経営改善のための人事施策は期待できないのかもしれません。

ではどうするべきかという話です。連合は8年ぶりにベア要求だそうですが、アベノミクスの恩恵がそれほどダイレクトに労働者に向くとは到底思えません。景気回復の陰で着実に進行する「雇用のゆらぎ」に対してきちんと向き合い、建設的な提案をすべき立場にあるという意味で、組合の重要性は増しています。いまは盲目的に賃上げ要求するのではなく、むしろ「賃下げ」要求を労働者側から行い、生活に耐えうる適正給与のもと、より多くの人びとが雇用を確保する手助けをすることが必要だと考えます。そのための人事制度の改定、たとえば総合型から限定型の職種への転向制度や勤務地条件に関する転勤型→地域型への転換、非管理職を選択的に選び専門性を高める制度、一定の範囲内での兼業推奨、あるいは無給休日の取得権利を制度として一定日数与える制度など、賃下げとセットであってもその人の価値観によっては働く動機づけを失わず、むしろ高める工夫が必要です。

いずれにしても、いつの時代も「逆張り」した企業の方が後になって評価されることがままあります。リストラ加速傾向の今だからこそ、それに逆らいながらも経営改善を求め、独自のユニークな価値を社会に提供する企業の登場に期待します。