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女性活躍推進は、まず優秀な男性社員がイスを空けることから

「底上げ人事は女性に失礼」南場智子氏(DeNA元社長)/日経BP

女性の活躍推進、特に管理職ポスト以上における登用を進める際に行われる「ポジティブアクション」について、南場氏は「本当に頑張っている女性職員と、底上げ職員が一緒の目で見られる」ことを危惧し、否定的な見解を示しています。なるほどそれも一理ありますが、私の考えは少し異なります。

そもそも、男性中心社会が遠い昔から続いていて国際的にも女性管理職比率が圧倒的に低い日本においては、ドラスティックな改革無くしては実体は変わりにくいのではないかと思います。近年、南場氏のようなクリエイティブで優れた女性経営者が少なからず現れていますが、それはあくまでごく一部の才能ある人たちであり、元々男女差関係無く活躍ができたであろう方々です。また、現状で企業において活躍している多くの女性管理職は「男性社会のルール」の中で成果を発揮し、無理を押してでもその地位を築いてきた、努力家の人たちです。

しかしながら、同じことを他の多くの働く女性に求めることは酷ですし、非現実的です。大切なのは、例えば家事・育児や地域での役割と両立しながら、時間的にもゆとりある勤務の中で、それでも昇進し管理者であることを組織が求め、そして女性ならではの感性・知性を発揮することを仕組みとして確立することが、本質的な多様性を認めるということになるのではないかと思います。

言い換えると、「女性」という性別自体が多様性を現すのではなく、女性的な働き方・生き方を受け入れ許容し、かつ組織の中枢に活躍の場を与えることが多様性の本来あるべき姿だということです。そのためには、従来の評価・昇進プロセスを大きく変更するか、何らかの意図を持ったドラスティックな配置が必要で、そのために「底上げ人事=ポジティブアクション」を行うことは組織にとっても社会にとっても得るものが大きいと、私は考えています。

先ほど「女性的な働き方・生き方」という表現を使いましたが、これは本質的には男性にも当てはまることですので、本来は日本語として正しくない表現です。男性自身こそが、旧来からの組織に身を捧げる一本槍の価値観から脱して、家事・育児や地域での役割と両立しながら働くという選択肢を、進んで選ぶことが必要です。もちろん、全員がということではなく、そういう選択があっていい、それも新たな価値を産む働き方のスタイルの一つなのだということを、組織や社会がきちんと認めるということです。それが結果として、女性の活躍を大きく後押しすることにもなります。つまり、昇進レースから自分の意思で「降りる」優秀な男性職員が、これからは必要なのです。彼らには、家庭や地域で活躍する術を自ら学び発揮し、そしていずれは社会全体をより力強くする源泉になって行く可能性が大いにあります。多くの社会的課題は身近な場所にあり、生活に密着して発生しています。今までその事実を見知らぬまま生きてきた男性たちがそこに気付き、カイシャの為でなくシャカイの為に働くという視点を身につけることは、社会にとってプラスに作用していくことと思います。同時に、組織での活躍を望む女性に「空いたイス」での期待役割を任せ、それに見合った処遇を伴い支援していくことで、長い長い日本の男性社会はようやく変化し始めていくのではないでしょうか。そのために、効果的な「底上げ人事」は必要なのです。
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