skillnoteのブログ

「スキルで自分らしく」を応援します

子ども向けに「自己紹介のコツ」講座をやり続ける理由

f:id:ASHIASHI:20161028173454j:plain

昨年度から土日を使って「子どものための自己紹介のコツ」という講座を時折実施しています。今日は、なぜこのようなことを私がやろうと思ったのか?ということや、子どもたちに対する想いを書いてみます。

私は、人前で話すときの「伝える技術」を子どもたちに知ってもらいたいのです。「伝える技術」を知っていたら人前で話せたのに、知らなかったから上手く出来なかった、という機会が自分自身の子供の頃を振り返ると多々ありました。それは成長のチャンスや共感者を増やす機会の損失だし、もったいない事だと考えています。

学校では、人前で発表する機会は何かと沢山あります。普段の授業やクラスルームに加え、授業参観や教員向けの研究授業、学芸会、夏休みあけの作文スピーチ、などなど。ですから、子どもたちに身近な機会として「自己紹介」を題材にした講座で「伝える技術」を知ってもらえたら、と考えて始めました。

いま話題のアクティブラーニングを使った授業でも、きっと子ども自身が発表する時間は増えていくでしょう。でも、肝心の「伝える技術」そのものは恐らく、学校教育の中できちんとは教えてくれません

教室の壁には「発表は相手の目を見て話そう」「笑顔で話そう」という注意書きは貼られています。でも、誰の目を見るの?いつ、何秒見ればいいの?どの順番で誰をみたらいいの?恥ずかしくて見れないけどどうしたらいいの?こんな気持ちじゃ笑顔になれないけどダメなの???

そうは先生にはきっと聞けないので、わからないのに暗黙のうちに理解したとみなされ、発表はしなきゃいけない。それって、物凄く辛いことですよね?方針のない経験の積み重ねは技術の習得にはつながらず、ただ苦痛の記憶だけが残ります。そして、発表や人前で伝えること自体が嫌いになってしまう子も中には出てくるでしょう。

・誰の目を見るの?
→一番後ろの人を見て、話し始めます。自然と真っ直ぐな姿勢になり皆に聞こえる声が出ます。

・いつ、何秒見ればいいの?
→一人に、一文を話し切るくらいです。5〜7秒が目安です。

・どの順番で誰をみたらいいの?
→真ん中一番後ろ、右奥、左奥、右の中ほど、左の中ほど、右前、左前、目の前、真ん中一番後ろに戻ります。大きくジグザグを描くように、後ろから前へ視線を動かします。

・恥ずかしくて見れないけどどうしたらいいの?
→うなずいて聞いてくれている友達が必ず一人はいます、その人に向かって話します。仲良しの子でもいいです、自然と恥ずかしさが消えてきます。

・こんな気持ちじゃ笑顔になれないけどダメなの?
→ありのままの気持ち、表情でいいよ。話してることが相手に伝わってるなぁと感じたら、自然と笑顔になっているよ。

例えばこれらが「視線」の使い方についての「伝える技術」です。教室でも、たとえこれがTEDの壇上でも全く同じです。知っていれば、話す時に注力する方針、頼る方向性を持てます。知らなければ、ただがむしゃらに話すだけです。「伝える技術」を知っているか知らないかで頑張り方が変わり、発揮できる能力と習得できる経験が変わります

また、「伝える技術」はより小さい時に知るほど、すんなりと身につくことが特徴です。大人になってからプレゼン講習を受けるよりはるかに、習得スピードも質も高く得られます。ただ、その子その子によって、学んですぐにできる子もいれば、出来ない子もいます。ぼんやり頭の片隅に残っていて、数年後に思い出したかのように突然出来る場合もあります。

f:id:ASHIASHI:20161028173547j:plain

そして大切なのは、性格的に人前で話すことが苦手で訓練しても話せないお子さんもいるのですが、それでもいいと私は考えています。人前でうまく話せない理由を知らないまま悶々と自己嫌悪に陥っている状況と、「伝える技術」の存在を知った上で自分はそれを表現するのには向いてないからやめようと判断することの間には、天と地の差があります。

出来ないことはいけないことではなく、適性の差なのだと客観的にとらえ、人前で話す以外の他の方法で表現すれば良いのです。だから、出来なくとも「伝える技術」を知ることに価値はあり、たとえ上手く出来ない自分であっても否定せずに、それでも良いのだと自己肯定できることが大切です

ですから、私の講座に来てくれるお子さんの保護者の皆さんに伝えたいことは、目の前の成果に焦らないで欲しい、どうか長い目でお子さんの様子を見守っていただきたい、ということです。

限られた1〜2時間の講座ではワークの発表にイキイキと取り組むお子さんが目立ちますし、周囲の暖かな評価を得るものです。反面、モジモジと小さな声で、結局一度も人前で伝わるように話せなかったお子さんを見たら、親心として情けないやら、受講料○千円は何のために、、とネガティブな思考に陥りがちで、お子さんを責める気持ちが生まれてしまいます。

でも少し考えてみて欲しいのです。講座で何も発言できなかったお子さんは、何も学ばなかったと思われますか?親に嫌々ながら連れて来られた、高学年の自我に芽生え少しナナメに構えた男の子は、無駄な時間を過ごしたと思いますか?

決してそのようなことはありません。必ず、しっかりと耳で聞き、頭の中にインパクトのある記憶として残しています。いずれ大人になり、人生の勝負所のような機会にいずれ直面したとき、多くの観衆を目の前にした瞬間突然に思い出すはずです。

「一番後ろの人を見て話し始めよう」と。

私が「伝える技術」を子どもたちに知ってもらいたい想いは、そういう長い時間軸の上に描いています。インプットとアウトプットの時間差があるなんて、とても幸せなことです。だって忘れた頃にかつての教え子たちに喜ばれるんですよ?講座を去り別れた後も、子どもたちの成長を何年も密かに楽しみたいと思っています。

その子ごとに現れる形は違っていい、でも必ず何かが子どもたちの心の内側に残り、日々の生活をほんの少しだけ良くしてくれるはず。それが、私が子どもたちに向けて自己紹介のコツ講座を続けている、続けられる理由です。


***


ここまでお読みいただいた皆様、ありがとうございます。もし共感していただけたら、そしてお子さんに話してみて少し関心を示してくれたら、ぜひ一度私の講座に遊びに来てください。素敵な時間を一緒に過ごしましょう。


【子どものための 自己紹介のコツ】

(11月、2月開催の「応用編」では話すことに加え「描く」ことで伝える技術を学びます。講座のチラシを描いてくれたプロのイラストレーターさんがゲスト講師で来てくれますよ。)

f:id:ASHIASHI:20161028211004j:plain