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「つい口を出してしまいたくなる病」にファシリテーターはどう向き合うか

何らかのテーマに基づいた会議や、ワークショップ等のファシリテーターを担っている際、参加者からの発言が意図したように出てこない場面につい、口を出してしまいたくなる瞬間がありますよね。これはファシリテーターが必ず出会いそして頭を悩ませる、ある種「病」とも言える、そして出来ることならば避けたいものと考えています。

誤解いただきたくないのは、ここで唯一の「正解」を語るわけではありませんし、そもそもそんなものは無いと思います。ただ、なぜそのような状態になるのかという事実の経過を理解し、対処方法の一例を知るだけでも何らか、ファシリテーションの質の向上に寄与するのではないかと思い、私なりの考え方を整理してお伝えします。

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参加者が「発言」に至るプロセス

会議やワークショップの参加者は、スタート時点から全員が神経を研ぎ澄ませ、議論の臨戦態勢にあるということはまずありません。時間の流れとともに徐々に脳が動き出し、自分の考えを形に変換し、他者に発信するという順序を経ていきます。ファシリテーターの腕の見せどころは、場全体が温まり議論が活性化する前の、まだ硬さの見える時間帯をどのように形作り、ふわりと全体をテイクオフしていくかという点にあると考えています。

さて、冒頭にファシリテーターが「問い」を投げかけてから参加者の「発言」に至るプロセスはおおよそ以下のような流れです。

・「問い」について頭の中で考える

・無意識下で、自分の考えが現れる

・意識下で、自分の考えを言語化する

・自分の考えを検証する

・いつ、どのように発言するか判断する

・発言する

・相手のレスポンスを受け取る

・自分の考えに反映させる
(以下、繰り返し)

「問い」を研ぎ澄ます

ファシリテーターが参加者に問いを投げかけその反応を待っているとき、最初の不安は「問いが正しく受け止められたのかどうか」ということです。理解できなかったり誤解していることを避けたいがため、過度に説明を重ねる場面を見かけることがありますが、これは不要です。一方的な補足説明は、せっかく「問いについて頭の中で考える」フェーズに入りつつある状況を妨げます。問いが不明瞭であれば、参加者から質問が出ます。質問に対してのみ、最低限必要な補足をするに留めます。

振り返ると、そもそも「どんな問いを投げかけるか」ということが非常に大切だということになります。誰もが聞いてすぐに理解でき、同じベクトルに向かって考えることのできる、不要な言葉を排除した、シンプルな問いが最も望ましい。ですから、ファシリテーションに入る前の準備「何を、どんな言葉で問うのか」ということに十分な時間を使い、問いを研ぎ澄ますことに大きな価値があります。

沈黙の時間の意味

そして「無意識下で自分の考えが現れる」→「意識下で自分の考えを言語化する」という、最も大切にすべき瞬間にファシリテーターが土足で入り込まないことです。黙って誰からも発言の出ない時間は、進行役としては不安で苦痛ですらあることはとてもよく理解できますが、しかしあくまでも主役は参加者。発言を早く得たいがためにヒントを提示したり、意図して誘導することは、そもそもの場の価値を低下させることにつながります。

この沈黙の時間は畑に種を蒔き水やりをしてから、発芽に至るまでの貴重な待ち時間と捉えたいものです。そして何より相手を信頼すること。必ず参加者からアウトプットは出てくるのだと信じることです。その気持ちは表情や行動から相手に伝わり安心で安全な空間を醸成し、より信頼が深まるほど質の高いアウトプットにつながります。

全体ではなく個々を見る

参加者の心理的な状況は、どの場面においても人により異なります。「真っ先に発言する人」と、「自分の考えを検証している人」、「いつ、どのように発言するか判断している人」が同じ時間軸、同じ場面を共有しているという難しさが常にあります。

大切なのはファシリテーターはその多様な参加者に対して「全体をまとめて何とかする」のではない、ということです。あくまで一人ひとりの状況の違いを受け止めながら、同時に場全体を動かす意識が必要です。少しわかりづらいですが、例えば議論の流れになかなか乗り切れない参加者を除外視するのではなく、立ち止まってじっくり向き合うことにも価値があるのだということを言葉で伝えたり、やや突っ走り気味な参加者には気付きの早さへの賞賛を示しながら、他の参加者の聞き役となることを期待役割として伝えたり、そうやって「場の空気」を整えていくという作業です。

それらの行動により参加者はより主体性を持ち、自らの考えを言葉に変換し、自然体で発言が重なっていきます。こうなればファシリテーターが「口を出す」必要は無いですし、自らの役割としての場作りはとりあえず成功と言えるでしょう。




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