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管理職が「偉い」という時代の終わり

世の中では今後、大企業の管理職ポストが激減して行くことが見込まれています。

- NewsPicks

組織で働くと自分の上には上司がいて、その上にも上司、上司・・・という構造に出会います。誰もがいつかは課長、ひょっとすると部長、役員etc...長らくこのシステムは機能してきて、肩書きという名誉とともに給与の上昇を伴うことでサラリーマンという職種の魅力を可視化し、戦後の経済成長を支えてきました。

しかし変化の時代を迎え、そのシステム自体が維持できなくなっていることは紹介記事の通りです。そこで私が想定するのは、数少なくなった管理職ポストが一層の価値を持ち社員の競争に勝ち残ろうという意欲を高めることには「必ずしもならないだろう」ということです。

これまでは働く誰もが平等で、頑張って成果を残した者が昇格と給与アップで報われるとされてきました。いわば一本のレールに1種類のニンジンが一定の感覚で置かれているという仕組みです。優れたプレーヤーはいずれ管理職となり経営層の一員となる、一本道のキャリア形成です。

この仕組みの優れていたところは、誰が見ても「仕事の成果」と「評価の結果」の関連が分かり易く、平等であるからこそ自分も頑張れば何とかなる、と労働意欲を掻き立てられたことにあります。(あくまでこれは使用者側からの目線で、実際には人脈や運が大いに作用していて、平等とは程遠い運用も少なからず並存します)

しかし誰もが既に気づき始めたように、今は肩書きを"報酬"と感じない世代が増えてきました。さらに給与に至ってもある一定の金額さえ得られればより多くは望まない、という人も決して珍しくなくなりました。そもそも組織での仕事を通じて得たいと期待することの質や量が人により細分化され、働くことに対する価値観は多様化しています。

この春に新入社員となった世代の相当の割合は組織内での昇進が第一、ではなく個人の生活や社会との関わりに一定の重きを置いたバランス型の価値観を持っているでしょう。新入社員だけでなく30代、40代の中堅社員にもそういった人々、つまりこれまでのモノラルな価値観に縛られた働き方に疑問を持ちつつ、何か有効なアクションを探し求めている人々が数多く存在することを肌で感じています。

さらに言うと、そもそも「管理職の方がプレーヤーより偉い」というのは誤った感覚で、組織の役割としてはどちらが上とか下ではなく両方に異なる価値があります。研究機関のような組織では昔からフェローの方が管理者より報酬が高く精神的な地位も逆転しているというケースもありますし、プロスポーツにおいては監督がチームでもっとも高い報酬であることの方が稀です。

管理職の方が偉い、という誤解は現在の評価体系にも要因があります。残念ながら人は自分より能力の高い相手を、額面通りに評価できない(しない)という性質のある生き物です。その意味で、多くの組織で成果評価に用いられている「目標管理制度(Management By Objectives)」では、自己評価と客観評価による合理的な仕組みであるという建前に関わらず、最終的にはローワーマネジメントにその判定結果を一任する仕組みであるという点において、既に本質的な価値を失っているものと私は考えています。管理者側がその判定権限を持っていることにより、評価される側より偉いという誤解を本人も周囲も抱いてしまいます。

それぞれの役割にはそれぞれの適性があり、組織の力を最大化するにはその基本原則にまず従うことが必要です。営業成績が抜群の社員が管理職として機能するかどうかは、異なる種目でオリンピックのメダルを目指すくらいに別の要素を求められます。ですから管理職をプレーヤーの延長線上に求めるのではなく、一つの独立した役割としてそれに適した人材を見つけて育成し、多くのプレーヤーが伸び伸びと活躍できる環境づくりを行ういわば裏方的な役割としての能力を規定するのが本来のあり方です。

そして管理職の総数がより少なく絞り込まれるのであれば尚更、プロフェッショナルとしての管理職スキルが必要となりますので、誰もが目指す役割とは認識されなくなります。「8割が課長にさえなれない時代」はなりたくてもなれない破れた夢なのではなく、その役割の高度化に伴う性質の変化による当然の結果なのです。

そんな中で人事部の役割は過去に無いほどに重要になっています。社内におけるキャリア形成の多様化・レールの複線化にどのように具体的な施策を打ち、多くのプレーヤーにどんな役割とやり甲斐を与えるのか。真の管理職をどのように育て、組織を健全化していくのか。「働かないオジサン問題」は個人ではなくあくまで組織全体の責任なのです。

変化はいつも、思ったより少し遅れてやって来ます。しかしそれが起きる時は雪崩を打ったように一斉に変わるでしょう。個人として今できることは何か、改めて自分に問いかけたい、そんな春先です。





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