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「イクボス」のジレンマ

私、いよいよ本厄の一年を迎えてしまいました。厄払いの効果を願うばかりです。

さて、イクボスについて一言。育児に関わる男性の参加を増やすためにはまず管理職から、というキャンペーンです。しばらく様子を見ていたのですが、どうも私にはその狙い、効果が理解できません。

◼︎「イクボス」養成、異業種連携の狙いは:日経ビジネスオンライン

結論から言うと、イクボス宣言は企業が「育児に参加する男性職員を応援していますよ」の建前にだけ使われているだけに見え、どうも過度に政治的な、戦略的な印象が拭えません。管理職の育児参加や支援を推奨してるんだから、組織全体もそうなのだ、と。

しかしそうはいかないのが実際でしょう。管理職の数だけ仕事と育児へのスタンスがあり、育児参加を是とする人とそうでない人がいます。本人が心の底から「イクボス」ではなかったとしても、企業の戦略ならばイクボスを名乗ることを会社から強いられても断れないでしょう。

先日あるメディアのイクボス取材記事で、どこかの部長さんが男性の育児参加の効果云々を語っておられました。読むとまだ小さなお子さんがいらっしゃるとのこと、「さすがに相手のある商売で定時退社とはいかないが、週に一日は20時には退社できるように努めています」。

〜週に一日は20時には退社できるように努めています!〜

彼の奥さんがこれを読んだら何と思うのでしょうか。通勤時間が1時間としても家に着くのは21時過ぎ、そこから具体的に育児の何ができるというのでしょうか。我が家では8歳と2歳の子どもがいますが、夕方から夜のおおよそのスケジュールは、

17時 習い事等から帰る
18時 夕食
19時 お風呂
20時〜21時 就寝

という感じです。
定時の17時に会社を出て夕食に間に合うかどうか、18時退社だとお風呂に間に合うかどうか、というところ。これを遠方への出張などがない限りは毎日続けています。

それでも、一日のうち子どもと向き合えるのは朝の1時間程度と夕方の2〜3時間。かたや専業主婦の妻は一日10時間くらいは一人で下の子の世話をするわけです。もちろん、託児は時折利用していますが。

たった2〜3時間ですがしかし子どもと向き合える時間は貴重です。お互いにその日にあったことを話し、楽しく眠りにつき明日を迎える。たったそれだけのこと。その積み重ねが親子の関係を少しずつ形成していきます。

子どもが眠りについたら、風呂を洗い食器をしまい、部屋を片付けて時には洗濯をします。全て終わると22時過ぎ。それが、ごく当たり前の、小さな子どものいる家庭の毎日です。

育児参加は気持ちの問題ではなく、手数です。実際にどれだけ自分の手で関わっているかの時間数なのです。子育ては苦労と喜びが隣り合わせ、そこにかける時間の量が大切なのです。

小さな子どもを育てる時期なんて、考えてみれば10年足らず、80年の人生のほんの一瞬です。小学校高学年にもなれば嫌でも親離れして、自立していきます。たった10年足らずしか未熟で手のかかる、そして無償の笑顔で向き合える貴重な時間はありません。その僅かな時間に男性も育児を最優先にしないなんて、それはとてももったいないことです。

イクボス、要は「名乗るなら本腰入れてやるべし」ということです。腰掛け気分で育児参加ヅラをするのは、とても恥ずかしいことと理解すべきです。イクボスを推奨することで本来あるべき姿とはかけ離れた男性の育児スタンスが「それで良し」とされていくジレンマに陥ることは、避けるべきなのです。

今の子育て世代、30代前半から40代前半は、第二次ベビーブーム世代・ロスジェネ世代で人数はやたら多く、そして景気の悪い時代をあたりまえのものとして過ごして来ました。会社でも出世一択ではなく、そもそも管理職ポストは限られていて、それを目指すばかりが価値でないことをよく知っています。キャリアの選択も多様化して、時には家事育児を仕事よりも優先すべきものと心の底から考え行動している人たちも少なからずいます。

かたや50代以上の部長職世代は全く逆です。ステレオタイプの価値観が大半を占め会社一択、昇進が心の満足度を最も高める人たちが圧倒的に多く存在しています。その彼らが今さら価値観を変え、真の「イクボス」になれるとは、私には到底思えません。

形だけのイクボスならば、いてもいなくても、部下の育児参加には影響しません。むしろ、自身は育児に関わらなくても理解が無くても良いので、定時に退社していただくことが部下の自由な時間活用、ひいては育児参加につながるのではないかと思います。(日本の残業問題の一つは上司が居心地良いイスからなかなか離れず家に帰ろうとしないことにもあると考えています。)

イクボスより早帰りボス、が増えることを心から願っています。昨今のキャンペーンもそういう方向で舵取りをしていただけると、実効性が高まるように思います。

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