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ワールドカフェで大学の"ゼミOB・OG会"をファシリテーションしてみた

先日、大学のゼミOB・OG会でファシリテーターを務めました。同窓会もそうですが、こういう機会って年1回の楽しみなイベントの割に、参加してみると座った席次第というか、意外に話せる人数が少ないですよね。どんな刺激や発見を得られるか胸を高鳴らせて参加したものの、帰路では不完全燃焼の自分がいて割高な飲み会だったなぁと感じ、翌年以降足が遠のく・・・そんな意識を常々感じていました。私が所属していたゼミは創立から20年、自分たちが第一期生ということもあり、やや責任を感じて今年改革の役割を担うことに。

まずは7月某日、前期のゼミ最終回の打ち上げに参加して現役のゼミ生がOB・OG会に何を期待しているかをヒアリング。いろいろ意見はあるものの共通する想いは「社会人の先輩方とガチで語りたいっス」。教育学専攻のゼミでもあり、社会に出てみると大学で学んだ事にはどんな意味があるのだろう、社会人の立場から大学での経験をどのように振り返っているのだろう、ということに集約されました。

かたやOB・OGの声は昨年度、会の終了後にメーリングリストであれこれ意見があり、参加したけど顔見知りの前後2〜3学年の人としか話せなかった、現役大学生ともっと話したい、というもの。うん、双方の想いはほぼ同じじゃないですか。それならあとは「場」を適切に創れば必ず盛り上がる!そう確信して具体的なプランの検討を始めました。

大きくは次のような構成にしました。

・いきなり飲み会にしない。2部制にして、第1部はアルコール無し、広めのスペースに着席形式で「マジメに語ることに集中する」時間。

・第2部は、第1部の余韻を活かして気軽な飲み会。ここは現役大学生にお任せ。(結果、とても素敵な夜カフェ風のスペースで、立食形式。とても好評でした)

・第1部はゼミの先生や現役生の要望/判断もあり、前半60分をOG1名による仕事紹介プレゼン。後半パート120分が私の担当に。対話の時間を確保する形を採用しました。

そして10月某日の国立市内某所、約30名の参加者が集まりました。現役生と卒業生の割合は半々、もう少しOB・OGが参加してくれると良いのだけど。やや広めの部屋に4つの机の「島」に分かれて着席。冒頭に現役生の幹事さんと先生からご挨拶。今年は趣向を変えましたよ、お楽しみにとのアナウンス。

まず社会人5年目OGからの仕事紹介レポート。お仕事の性質上詳細は伏せますが社会の課題に真正面から取り組む公職で、家族や学校・地域社会の課題をあらためて意識させられました。そのシビアな仕事の世界に一同が息を呑みながら聞き入りました。彼女のプレゼンテーション能力は非常に高く、難しい話題をわかりやすく、聞き手の興味を引き出しながらのお話のため60分があっという間に過ぎていきました。短い意見交換の時間もあり、参加者の満足度は相当に高かったと思います。
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いつもの年とやや違うぞ、という良い空気の中、短い休憩を挟んで私の担当パートが始まります。今回は現役生とOB・OGの対話機会を十分に確保するという目的のため"ワールドカフェ"形式でのディスカッションを採用しました。全体の大きなテーマは「個人と社会の関係」。これは事前にメーリングリストで公開し、大まかな議論のイメージを持って参加いただきました。

いよいよ開始。ワールドカフェの一つ目の設定テーマは「大学で学ぶ"教養"は社会でどのように役立つと思いますか?」に設定。小グループでお互いに自己紹介の後、進行係の"テーブルホスト"を決めます。ワールドカフェは3つのラウンドで構成され、まず第1ラウンドはこのグループ内で10分間、提示テーマに関する意見交換をテーブルホスト進行のもと行います。

「教養って大学の教養科目のこと?」「もっと広い意味だよ」「専門以外の分野は全て教養だと思う」「社会人になって実際役立ったのは〜〜だよ」などなど、大学生と社会人それぞれの立場で意見が出てきます。机に敷かれている大きな紙に自分の考えや他人のコメントを自由に書き込み、線や丸で囲んだりつなげたりしながら、自由に議論を展開していきます。
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あっという間に10分間が経過。ファシリテーター(私)の案内で"テーブルホスト"以外の参加者は他のテーブルに移り、第2ラウンドが始まります。各テーブルの机には様々な文字や形が並んでおり、まずテーブルホストから第1ラウンドでどのような議論があったか、紙を指し示しながら説明します。続いて他のテーブルからの参加者は自分たちのテーブルでの議論や意見を順に紹介していきます。同じテーマなのに微妙に違う議論が展開されていることに気づき、更に幅広い考え方や、あるポイントに関して深く掘り下げたりして議論が盛り上がりを見せていきます。

10分間が経過すると、再び元のテーブルに戻り第3ラウンドがスタートします。テーブルホストは書き加えられた紙を指し示しながら、メンバー不在の間に展開した議論を紹介します。思いもかけず引き継がれ展開していった話や、訪問者ごとに異なる考え方に気づきます。そして他のメンバーからは訪問した先のテーブルでの新たな気づきや発見を報告します。そうして会場の多くの意見が自然と入り混じり、テーマに関する多面的な考え方に気づき、また本質的な課題の核心に近づいていきます。

第3ラウンドが終了したら、各テーブルから1名ずつ感想を述べて会場全体でシェアします。「"教養"の捉え方が大きく広がった」「社会人になると大学で学んだ事はほとんど忘れてしまうけど、何となく残っているモヤモしたもの、それこそが教養だ!」「教養とは、人間の幅広さ、引き出しの多さであり重要」などなどワールドカフェの議論を経たことで、新たな気づきに出会うことができました。

続けて二つ目の設定テーマ「今後、個人と社会はどのように関わっていくのが良いと思いますか?」の議論に移ります。皆さんワールドカフェの作法に慣れましたので、スムーズに新しいテーブルホストを決め、第1ラウンドの議論を開始します。現代は社会の課題や多様な働き方、ライフスタイル、価値観が存在する"ゆらぎの時代"であり、その中で個人は社会にどのように関わっていくかという、根源的で深いテーマです。さあ何から話そうか、という迷いはほとんど無く、思ったことが口を付いて出たりテーブルに敷かれた紙にそれぞやれの想いを連ねていきます。そう、OB・OGにとっては大学時代のゼミの時間に舞い戻ったような懐かしく嬉しい感覚ですね。年代こそ違えど同じ教育学を志した仲間です。気づくと学生や社会人の立場を超えて「ガチトーク」がそこかしこで繰り広げられ、真剣な表情や時折笑いも交えて会場全体の空気がより活き活きと変わってきました。
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テーブルを移しての第2ラウンド、皆さん良いペースで意見の広がりと交わりを楽しんでいる様子です。特に現役大学生の皆さんがひるむことなく、堂々と自分の意見をOB・OGにぶつけていく姿が印象的でした。

第3ラウンド、ふたたび元のテーブルに戻り、この捉えどころも正解もない問いについて、少しずつ光明を見出していきました。個人は社会にどのように関わっていくのか、自分自身という目線でも、社会全体という目線でも考えられることは様々にあり、また実現可能なことも発見できます。

全体共有の時間では、ある参加者からの意見が印象的でした。ドイツ出身の彼いわく、ドイツには「社会人という概念が無い」のだそうです。学生も既に社会の一員であり、学ぶことと働くことは同じ線上にあり、等しく責任と権利を持っている。反面的に日本の大学や取り巻く社会の課題、個人と社会の関係の一断面がうっすらと見える気がしました。

そして最後には何名かの方に"ワールドカフェ"に参加してみた感想をお聞きしました。後日のメーリングリストで共有した感想も含めてご紹介します。

・普段のゼミでのディスカッションとは異なり様々な年代、経験をなされている方とお話しすることができ、本当に楽しかったです。個人が社会で主流とされている考えに翻弄され飲み込まれてしまいがちな中でいかに生きていくか。今すぐに明確に答えがだせるわけではないと思うのですが、個人の多様な価値観を許容できる社会がつくられること、そして個人も社会が特定の場所だけだと思わないことが、これからの時代で生きていくコツなのかな、と感じました。

・「勉強したことはほとんど忘れてしまっても、何か残るものがある、それが教養なのではないか。」「今、専門だと思って勉強していても、社会に出ればすべて教養になる。」という二つの意見がとても印象に残っています。今自分が勉強していることは将来どのような形で役に立つのか、学生の間に何を吸収すべきなのか、改めて考えるきっかけになったと感じています。

・クオリティの高い、最高の時間でした。ほぼ初対面の学生さんとも、OB・OGのみなさんとも、共通のテーマに沿って本気でディスカッションさせてもらうことができ、ワクワクできる知的刺激に満ちた素晴らしい時間を過ごすことができました。世代を超えた仲間たちとの知的な交流はこんなにも充実して楽しいものなのかと!


ということで、無事に第1部は終了しました。細かな課題はまだまだありますが、当初の狙いであった「現役大学生とOB・OGの対話」は十分に図れたのではないか、と思います。

そして会場を移しての第2部、懇親会は大いに盛り上がりました。第1部で3時間をかけて濃密な時間を共有した仲間ですから、当然と言えば当然です。壁を感じることなく異なる世代の参加者が自分を伝え、相手を受け入れ、あらたなつながりが生まれました。低成長時代は「持つこと」より「つながること」に価値があると常々考えていますが、それを体感した瞬間でもありました。

大学を離れて20年近く、今回のような節目の機会に関われたこと、そのチャンスをいただけたことに心から感謝しています。そして、次年度は今年の噂を聞きつけた他の多くのOB・OGが、何だか面白いらしいぞと新たなつながりを求めて参加してくれることを期待しています。


以上、「大学の"ゼミOB・OG会"をファシリテーションしたら面白くなった」報告でした。もし「うちのOB・OG会、同窓会もファシリテーションして盛り上げて欲しい!」というご要望がありましたら喜んで相談に乗ります(^ ^)

*ご連絡先はこちら→ skillnote111@gmail.com


いくつか告知です。

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セミナーコミュニティ"アカデミア日本橋"で少しトークします。10/29(水)19:00〜

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