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デキる社員を育てると、小さな社員が育つ 〜パラレルキャリアの勧め〜

企業人のキャリア構築と人材育成の課題について、現状の要点を整理してみます。

・企業の活動目的や理念が以前に比べ矮小化してきた。戦後から高度経済成長の時代は、企業は「社会を良くする為の使命感」を強く持っていたが、飽和の時代を迎えそれは過去のものとなった。また多くの企業は度重なる不況を経験した後に近視眼的な経営理念を掲げ、自社の成長それ自体が活動目的となる方向にシフトした。

・社員に求める姿も変化し、かつては大きな方向性として社会を良くする「徳のある人材」を育てることを目指し、結果として事業への貢献を果たしてきたが、今は「自社の成長に寄与する人材」、つまり売上や利益を伸ばせる社員をダイレクトに求めている。

・そうすると自社の価値観で「デキる社員」を求めるようになり、それは世の中全体から見るとごく限られた技術やスキル、あるいは特定の組織に特化した上での優秀さを身につけた社員が育つことになる。つまり「小さな社員」が育つ。

・現代は「成長社会」から「持続可能な社会」へシフトしている。人口問題、食糧問題、エネルギー問題、気候変動etc. 社会、市場の変化に小手先ではなく理念から見直し適応することが必要な時期に差し掛かってきるのだが、まだ多くの企業はそれに気づいていないか、または気づいていても具体的な対応を先送りしており、自社の社員に求める能力や人材像についても同様に過去のままであることが大半である。

・しかし現実には変化に対応できた人材こそが成果発揮につながり、同時にそれは自社の成長にも寄与する。直線型でなく、曲線型の人材。一つの価値観より、多様な価値観を持った人材。そういう人材こそが事業活動を通じ社会の課題解決に貢献できる。

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さて、そういった課題を解決していく一つの方法として、ビジネスパーソンのキャリア形成における「パラレルキャリア」という考え方を紹介します。

とかく企業に勤めると、その道一筋にスキルを習得して行きますが、それは必ずしも市場価値の高い人材にはつながっていかず、社会の変化に対応していく力が充分に得られません。経験を重ね自分としては完成に近づいていると実感するほど組織への特化が進み、相反的に社会で通じる能力は低下していきます。

むしろ、一見本業とは関係ない世界をもう一つ極めることで「2つの軸」を持つことができ、いずれの世界においても特徴のある人材として重宝され、成果の発揮につなげることが可能になります。これを「パラレルキャリア」と呼んでいますが、趣味や余暇や関心を持って(受け身で)楽しんでいるものの中から、これは突き詰めて「プロフェッショナルになりたい」というものを見つけてスキルを習得し、またアウトプットする側となる一連の考え方と行動を指します。

例えば、絵画鑑賞が好きであれば子供さん向けの学芸員補助をやってみるとか、タブレット端末が好きで得意なら地元の公民館で高齢者向けの講座を開催してみたり、あるいはビジネススキルとして身につけた税務知識やビジネスマナーの公開セミナーを学生向けに行うなど。その行動により誰かが喜んだり救われるようなソーシャルグッドな活動であれば周囲の共感や支援を受けることができ、とても良いと思います。

また、会社以外の場所で自分の存在価値が認められる場所(サードプレイス)を持つことは、働く上での精神的な「ゆとり」につながり、また本業の自分を客観視することができる効果があります。また、それまでいかに自分が所属先の企業名や名刺の肩書きで仕事を「させてもらっていたか」に気付くことができます。その結果として従来よりも高いパフォーマンスを、本業においても発揮することにつながるものと考えています。

一方の現実として、これだけ世の中が細分化し価値が多様化した環境下では、企業が自社の社員を一律に育成していくことの限界に面していることも事実です。ある程度個人単位でのチャレンジによってスキルを高め、属する企業の新たな側面を支えていくという構図はお互いにとってwin-winとなります。素直に自社内で育ってきただけの社員からは面白いアイデアは生まれづらいでしょうが、パラレルキャリアを選択している社員は、持っている引き出しの数が違い、期待できます。

そして今後、雇用の流動化がますます進んでいくとされる中で、単に収益源としての副業ではなく、自立的なキャリア形成をより促進するために有意義なパラレルキャリアを築くことは、先ほど述べた社会の変化に対応することにつながると考えています。目先の「デキる社員」を目指すのではなく、大きな視野と素の実力・人脈を身につけることこそ、自身の人材価値を高めることにもつながります。

2軸を持つというのは特別なことではなくほんの少しの意識の変革と、平日の夜と休日の過ごし方を変えることで実現できます。多くの方が「パラレルキャリア」へ向けた具体的な行動を始めていただくことを、同じビジネスパーソンの一人として期待しています。

(2014.3初稿/2015.11加筆修正)



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