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「女性活躍推進」は女性の活躍を阻害している

行政の旗振りのもと、企業やその他の組織において女性の活躍推進は重要な課題として様々な対策が展開されています。私はその代表的ないくつかのやり方が、むしろ推進ではなく阻害要因になっていると、感じています。
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国際的に見て日本での管理職登用は、行政でも企業でも著しく男性偏重となっています。日本における女性管理職比率は平均1%程度と韓国と並び最下位グループにあり、それが政府の強い旗振り行動につながっています。しかし、ただ盲目的に女性管理職を増やすやり方が適切で、女性自身や社会全体にとって恩恵となるのでしょうか。

昨今多くの企業では選抜型女性リーダー育成プログラムが展開され、数年以内に女性管理職◯%を達成するのだというコミットがなされています。しかし大切なのは数値目標の達成ではなく、その実現のために必要な組織風土の改善や環境整備が全体としてなされているのか、ということです。例えば既に管理職として活躍されている多くの女性社員は、男性社会のルールの中で勝ち抜きそのポストを得た人たちです。男性管理職的な働き方・価値観に基づく女性管理職というのは、結局その他多くの女性社員の価値観と相入れないことがままあります。あなたはできるはず、私はできた、期待している、というマネジメントです。現在は男性においても同様ですが、決してすべての社員が昇進を望み、管理職を夢としているわけではなく、むしろ多様な価値観を認め、それに伴う働き方やキャリア形成を支援することこそが、これから将来に向けて企業や組織が向かうべき方向であるはずです。
 
新たな女性管理職の登用方法にも課題があります。選抜型の育成プログラムにより一定数は本人の意欲と能力、周囲の評価が一致する素晴らしいリーダーになるでしょう。しかしながらそれは全体のごく一部に限られた成果であると予測しています。候補者とされる中には元々、本人が管理職としての働き方を真には望んでいない方も数多く見受けられます。企業が数値目標達成を何よりの目的としている中では、本心では望まないものの「乗せられた」被害者となります。

また男女含め現在、一般的な管理職登用の時期を迎えている世代というのは、1990年前後入社のいわゆる「大量採用世代」にあたり、人材のダブつきが顕著です。そもそも男女問わず人数が多いところに、折からのリストラ圧力も兼ね合い管理職ポストの数自体が減少しているという現状でもあります。その中であえて意識的に女性管理職を登用する、いわゆる「ポジティブアクション」が企業や組織にとって本当にプラスの効果のみを発揮するのかどうかは、とても難しいところです。同年代の男性社員が仮に、自分と同じか少し満たない成果を発揮している同年代の女性社員が先に昇進し管理職になるという場面に接した時、心情的には納得することは難しいでしょう。そもそもマネジメントスキルというのはプレーヤーとしてのスキルの延長線上にあるものではなく、少し異質の能力を求められるものですので、にもかかわらず旧来型の男性社会式の評価を経て、女性活躍推進の名のもとに昇進を果たした女性管理職が十分に期待役割を果たすことができるかどうか、その点について慎重な判断が必要なのではないかと考えています。

女性管理職に新たな役割、組織のパフォーマンス向上を期待するのであれば、登用基準を男性社員のそれとは根本的に変えることも有効です。イメージとして、中小企業の社長夫人で担当は経理だが人心掌握に著しく長けていて、社員に厚い信頼を得ており組織の実質的なリーダーである場合などがあります。大企業においてもそれに類する能力を持った女性社員を、これまでの評価軸に頼らず抜擢するなどの挑戦をしてみることは、女性管理職像を多様化する意味で価値があるものと考えます。
 
一方で多くを占める管理職以外の一般的な女性職員の働き方についても、正しい理解と支援が必要です。採用当初に望まれていた役割が市場や経営環境の変化に伴い変化して行くことはありますが、今まさにそういった状況下で働き方のシフトチェンジを求められている女性社員は数多くいます。この際に大切なことは、求める労働量や質を上方修正する場合には、必ずそれに見合った処遇の修正を伴うことが必要です。ごく当たり前のことですが、得てして「仕事のやりがい」や「あなたへの期待」を理由として、給与水準は維持したまま、本人の変化を期待あるいは押し付けるケースが発生しています。

そもそも労働というのは、働きに見合った処遇があって初めて成り立つ「契約」です。だからこそ責任を持って自らの職務のプロフェッショナルとして成果発揮を目指すことができます。無償労働の上乗せは「やりがい搾取」とも言える、まさにブラック企業的な発想と解釈せざるを得ません。 またそれが女性活躍推進なの手法だと認識しているのだとしたら、それはとんでもない誤りであると考えます。 

ここまで整理すると、女性活躍推進それ自体は正しい方向なのですが、現在日本で行われている具体的なやり方や依拠する考え方には課題が多い、ということです。これらに関して、OECDから日本の労働実態についての興味深いレポートがあります。

日本再生のための政策・OECDの提言(2012年4月)

この中で(P.18-19)、日本の女性管理職比率が低いことは課題であるものの、日本の「労働実態」に見合った「現実的な」目標を設定すべし、と指摘しています。「労働実態」とは、長時間勤務が善とされ評価される労働慣行のことを指し、国際的には異常な文化とすら見られています。労働に対する評価は本来「成果」によってなされるべきものが、「時間」によってなされている側面が根強く、その風土のままで女性管理職の比率のみを引き上げるというやり方は実現可能性も効果も低い、とされています。

この点で見落とせないのは、家事・育児労働の男女における分担です。共働き家庭において、勤務形態が同じ夫婦間であっても家事・育児労働の分担は女性の側により多くなされているのが現実です。女性が理想的に働くことを推進するためには、男性が家事育児の主体となる意識形成に併せ、そこに割く絶対的な時間数を増加させることが大切です。最近ようやく「育メン・家事メン」いう価値観も認知されてきましたので、男性の育児家事が「参加・手伝い」というオマケ扱いの意識でなく、主役としてのそれに変化すべき時期に来ています。それこそ女性が職場で活躍するための環境整備であり有効な支援となります。先ほどのOECDレポートにも、家事を目的とした休暇取得をできた男性社員の上司には報酬や評価の引き上げを行うという一案が示されていますが、そういう制度による強いリードが、変化のためには必要であると思います。

真の女性活躍推進のために、男性の変化も含めた実効性の高い対策に切り替えていくことを、他に先んじて実行できる企業こそがオンリーワンとしての企業価値を高め、ひいては社会の健全化に資するものと思います。